時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

”かんぽの宿”―払下げの歴史は繰り返す

 全国の"かんぽの宿"70施設が一括してオリックス不動産に売却される件について、鳩山総務相は、この決定について疑問を呈し、反対しておられるようです。この問題、実は、古くて新しい”払下げ問題”であると思うのです。

 政府が、何らかの事業を国営や公営として行い、それが、民営化される場合には、必ずと言ってよいほど、払下げ問題が発生します。明治時代にあっても、政府主導型で殖産興業を進めたため、全国各地に官営工場や施設がありました。ようやく民間経済が育ったところで、財政難でもあった政府は、これらの官営事業を民間に払い下げる、ということになりました。ところが、北海道開拓使の払下げでは、開拓使長官黒田清高が、同郷の五大厚友に格安で払い下げたことから、世論の非難を浴び、大隈重信が追放された明治十四年の政変の遠因ともなりました。その後も、払下げ問題は、しばしば政界の汚職事件に発展しています(共産主義が崩壊した時の混乱は、さらに酷くなる・・・)。

 政府が、公営事業や国有財産を民間に譲渡する場合には、払下げ先の決定過程において、公平性や透明性を欠きますと、すぐにでも政治事件に発展するものです。況してや、”かんぽの宿”となりますと、国民が積み立ててきた保険料から支出されてきたわけですから、余計に厳しい視線が向けられてしまうのです。日本郵政は、国民が納得するように情報を公開し、疑いなきよう説明すべきでしょうし、政治の側も、売却を中止するならば、その理由と根拠を国民の前に明らかにすべきと思うのです。

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