時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

北朝鮮に適用されない「強制的失踪条約」の不備

 本日、衆議院で可決された「クラスター爆弾禁止条約」の承認案も、海岸線の長い日本国の防衛を考慮しますと、もろ手をあげて歓迎できるものではありません。加えて、同時に可決されたという「強制的失踪条約」の承認案もまた、拉致事件の解決にはあまり役にも立ちそうにないのです。

 何故ならば、北朝鮮による拉致事件は、日本国の刑法を適用することができ、拉致事件の責任者を訴追できることはさて置くとしても、本条約は、条約の効力は過去に遡及しないため、北朝鮮による拉致事件には適用できないというのです。確かに、拉致事件の発生時は過去であったとしても、被害状況が継続している場合には、遡及効果を認めてもよさそうなものです。しかも、拉致という行為は、法の一般原則に照らしても犯罪性がありますので、条約の作成は、その法文化に過ぎないとする解釈も成り立ちそうです。

 日本国政府は、「強制的失踪条約」の草案作成の段階で、現在に継続している拉致事件について、条約の効力が及ぶよう、国際社会に訴えるべきであったと思いますし、国会もまた、全会一致で承認するに先だって、条約草案の内容について議論すべきであったと思うのです。

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