時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

単純ではない曽野綾子氏のコラム問題

 曽野綾子氏が産經新聞社の紙面に掲載したコラムについて、アパルトヘイトを容認しているとして、アフリカ支援を行っているNPOが撤回求める抗議文を送付したと報じられております。南アフリカを挙げて移民の居住地を設けることを主張したことが問題視されているようです。

 曽根氏が、介護不足を解消するために移民を容認している点や、移民問題南アフリカとを関連付けた点は確かに首を傾げるのですが、今まで誰もが見過ごされがちであった移民と居住地の問題を提起したことは、抜けていた論点を補ったという意味で、意義はあったのではないかと思うのです。全てではないにせよ、政府が居住区を設定しなくても、人種や民族に違いがあると、連帯意識や同郷意識が絆となって、自然に居住区が分かれてしまう傾向があります。多民族国家であるアメリカでも、出身国別のコミュニティーが見られますし、日本国内でも、中国出身者が集まる中華街や在日韓国・朝鮮人が集住する地域があります。”治外法権化”や”国家内国家化”が懸念されこそすれ、これらの地域は、移民してきた側の自発的意思によるものであり、外国人居留区やアパルトヘイトのように、政府が居住を強制したわけでもありません。そもそも、地球上に多数の国家が存在すること自体が、棲み分けの結果なのですから…。

 民族集団の集住傾向を考えますと、移民が増加することは、国内に、国や民族の数だけの出身国別の居住区が出現し、日本の社会が際限なく分裂する可能性があることを示しております。曽野氏のコラム問題は、移民に伴う社会分裂リスクを提起しているとも言えるのではないかと思うのです。

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