時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

集団的自衛権違憲論への反論その3

 集団的自衛権違憲論の第三の論点は、先制攻撃容認に対する批判です。その批判とは、「『自衛のための必要最小限度』や『日本の自衛の措置』に集団的自衛権の行使も含まれる、と主張する論者もいる。しかし、集団的『自衛権』というのがミスリーディングな用語であり、『他衛』のための権利であるというのは、国際法理解の基本だ。それにもかかわらず『自衛』だと強弁するのは、集団的自衛権の名の下に、日本への武力攻撃の着手もない段階で外国を攻撃する『先制攻撃』となろう。集団的自衛権は、本来、国際平和への貢献として他国のために行使するものだ。そこを正面から議論しない政府・与党は、『先制攻撃も憲法上許される自衛の措置だ』との解釈を前提としてしまうことに気付くべきだろう」というものです(是々非々さまのコメントより)。

 第三の論点につきましても、違憲論者は、”決めつけ”によって、議論を強引に誘導しております。何故ならば、”集団的自衛権は、他衛のための権利である”ことは、国際法理解の基本と断言しておりますが、こうした理解は、必ずしも国際社会で広く共有されているわけではないからです。むしろ、同盟国への攻撃は、自らへの攻撃と見なしますので、自他の区別なく、同盟国の”集団化”に基づく”共同防衛”として理解されております(ミスリーディングは違憲論者の方では…)。違憲論者は、正当防衛権を想起させる”自衛”という言葉を取り除きたいがために、”他衛”論を持ち出したのでしょう。

 次いで、”他衛権”を根拠とした先制攻撃を批判しておりますが、集団的自衛権において、直接に攻撃を受けた国以外の同盟国による攻撃を先制攻撃として否定しますと、集団的自衛権の存在意義も完全に失われますので、この論理展開も説得力がありません(集団的自衛権には、必然的に先制攻撃が伴う…)。また、個別的自衛権の行使としての先制攻撃もあり得るわけですから(相手国による自国に対する武力攻撃の着手…)、敢えて集団的自衛権の行使のみを否定する根拠ともなりません。

 第3の論点は、集団的自衛権の行使を違憲と言わんばかりに、集団的自衛権をも曲解しているようです。違憲論者の主張には、憲法解釈と共に、集団的自衛権の解釈にも偏りがあるように思えるのです。

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