時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日韓慰安婦合意評価の奇妙な前提

 昨年末の日韓慰安婦合意に対する肯定的な評価において、もう一つ、奇妙な点は、この合意によって、国際世論が韓国に対して疑問を持つに至ると決めつけていることです。しかしながら、この見解、国際社会において、韓国の主張が捏造であることが広く知れ渡っていない限り、成り立たちません。

 日韓合意における”韓国不利論”では、仮に、韓国側が、日韓合意を破った場合、韓国は、国際合意も守れないいい加減な国であると見なし、一斉に、韓国批判に回るというものです。安倍首相も、韓国が違約すれば、今度ばかりは”韓国は終わる”と発言したとも伝わります。しかしながら、そもそも、この合意内容は、日本国側の謝罪と10億円の支援基金の拠出が含まれておりますので、国際社会においては、日本国政府が、”性奴隷制度”を認めた上での支払いと報じられております。このことは、慰安婦像の撤去要求は、日本国側の”隠蔽要求”と誤解されますし、たとえ、韓国側がこの要求に応じなかったとしても、それほどに酷く国際社会から批判を受けるとも思えません。何故ならば、国際社会は、自国の罪を隠そうとして慰安婦像の撤去を求めた日本側にこそ、非があると見なすからです。

 日韓慰安婦合意は、実のところ、国際社会において韓国側の主張を覆さない限り、日本国側にとりまして極めて不利です。この点を考慮しますと、韓国不利論の人々も、合意の上に胡坐をかかず、日本国政府に対して積極的に史実の発信を求めるべきではないかと思うのです。

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