時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

戦国時代から続く世界支配戦略問題

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。現在の‘皇室’問題の根は深く、戦国時代に遡る必要がありそうです。そこで、今日は、イエズス会について考えてみることにしましょう。
 
16世紀以降、マルチン・ルター等による宗教改革を機に、ヨーロッパではキリスト教の分裂が起き、カトリックの旧教とプロテスタントの新教との間に激しい宗派対立が始まります。イエズス会とは、イグナティウス・ロヨラ、ならびに、フランシスコ・ザビエルなどの修道士たちによって、1534年にパリで結成されたカトリック擁護の組織です。ロヨラが元軍人であったこともあり、法王への絶対服従をその要綱として掲げるなど、イエズス会は軍隊組織に近いと評されています。特に、ヨーロッパにおいてカトリック側が失った失地の回復をアジアに求め、多くのイエズス会士を東南アジアや中国大陸に送り出しています。1549年のフランシスコ・ザビエルの来日も、その一環として位置付けることができます。
 
さて、英語の辞書で、イエズス会士を意味する「Jesuit」をひいてみますと、「策士、策略家、詭弁化」という意味があります。それでは、何故、このような芳しくない意味を帯びるに至ったのでしょうか。

そもそも、創始者のひとりであるロヨラは、モンセラート修道院聖母像の前で神に一生を捧げることを決意しておりますが、この聖母像こそ黒マリアであり、異端信仰との結びつきが伺えます。また、カトリック組織から比較的自由な立ち位置にあったイエズス会は、ロヨラとザビエルの両者が共にスペインのバスク地方出身であったことから、教皇庁のみならず、スペインによる世界支配の戦略を担う実行部隊としての一面がありました(1494年にスペインとポルトガルはトルデシリャス条約Demarcation Treaty of Tordesillasを結び、両国は世界二分支配を計画)。さらに、イエズス会が”多国籍化”し、スペインとの関係が希薄化した後も、その活動範囲は国境を超えて広がっていたため、カトリックの仮面を被った策士として各国から警戒されたのです。多くのアジア諸国は、昨日の記事で挙げた手段を以って植民地化されてゆくことになったわけですので、日本国のみを見逃したとは思えません。

日本国は、江戸時代に鎖国いたしましたし、また、スペインもポルトガルも衰退いたしましたので、このような世界戦略の存在は、既に過去のことであるかのように考えられがちですが、そうではありません。現フランシスコ法王も、ローマ教皇庁史上はじめてのイエズス会出身です。このような世界支配観を有するイエズス会、並びに、その手法や戦略を真似た勢力があり、これらの勢力は、今なお巧妙に仮面をかぶりつつ、手を変え品を変え、世界支配を求めて水面下で活動を続けている可能性があるのです。今日世界で起きている様々な問題の深淵にも繋がる真の歴史を見出すには、国家間の表面的な関係のみならず、非国家集団の世界支配の問題をも解明する必要があるのではないでしょうか。

 
 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。
 
(続く)