時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

裏イエズス会の‘さくら作戦’

本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。フランシスコ・カブラルが日本人に対してラテン語ポルトガル語を習得させようとしなかった真の理由として、昨日は、カブラルたちが、「裏イエズス会」とも称すべきザビエル派であって、奴隷貿易や武器密輸、すなわち、‘悪巧み’と関わっていることを、日本人に知られないようにするためであった点を指摘いたしました。この点に関する「日本人がそれらを理解し宣教師たちが話している内容がわかるようになると宣教師を尊敬しなくなる」というカブラルの表向きの理由は、ザビエル派が行っていたもう一つの策略の存在を示唆するものとなっている、と言うことができます。
 
ザビエルが布教に訪れると、そこの信者たちがザビエルを神のように崇めて、扱ったため、この様子を見ていた人々は、ザビエルをさぞや‘尊い人’であろうと認識するようになり、多くの人々が入信したと言います。

このことは、シェークスピアの『リチャードⅢ世』におけるリチャードⅢ世の‘さくら作戦’を想起させます。悪逆非道な行為を繰り返し、品性や道徳心に欠けるリチャードⅢ世は、当然国民の間で不人気であり、王位は不安定となるわけですが、自らが不人気であることを誤魔化しその地位を安泰とするために、腹心のグレー卿に、所謂‘さくら部隊’をつくらせます。リチャードⅢ世は、このさくら部隊の部員たちに、自らをあたかも尊敬に値する‘偉い人’であるかのごとくに、‘恭しく’扱わせることで、このさくら部隊の演技を見ていた他の国民に、‘リチャードⅢ世は偉い人である’という錯覚を生じさせるように仕向けたのです。
 
『裸の王様』のお話のような人間の集団心理を利用した詐欺なのですが、このような詐欺的策略は、効果があるがゆえに古来より使われていたようであり、ザビエルたちも、恐らく、この方法をつかったと推測することができるのです。すなわち、カブラルたちは、尊敬されている間は何をしていても疑われない、真の姿が見えないという点から、‘さくら作戦’を行っていたと推測することができるのです。
 
そして、今日でも、‘さくら部隊’は、存在しているのではないでしょうか。
 
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(続く)