時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

中国政府系ファンドの上陸は無問題?

 新聞報道によりますと、渡辺金融担当相は、中国政府系ファンドによる日本企業への投資を歓迎するとの談話を公表したと言います(本日付日経朝刊)。中国政府系ファンドの”安全性”を、日本国の政府が保証するような発言なのですが、本当に、大丈夫なのでしょうか。

 中国政府ファンドが日本企業の株式を取得しますと、当然に、株主としての権利を持つことになります。大株主ともなれば、株主総会におきまして、経営方針に口を挟んだり、役員の選任にかかわったり、さらには、M&Aに関与することもできます。加えて、株主に不当に損害が与えられた場合には、株主訴訟を起こすもできましょう。今のところ、中国政府は、国家戦略と切り離す、つまり政策的に議決権を行使することはしない、と説明しているそうですが、共産主義国家とは、そもそも政経一致の体制です。共産主義国にとりましては、政治が経済に介入することはあたりまえのことなのです。また、毒入り餃子事件でも明らかになりましたように、中国政府のこの発言が、信頼に足りるとは到底思えません。株式を獲得した途端に、前言を翻すとも限らないのです。

 中国政府系ファンドによる投資の増加によって、日本企業が長年かけて築き上げてきた技術力さえ失われかねないのですから(技術移転の加速・・・)、もろ手を挙げて歓迎とはいかないのではないか、と思うのです。もし、投資を認めるにしましても、それは、政治的介入を防ぐ仕組みを構築してからにすべきではないでしょうか。