時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

納得できないロシアの言い分

 本日、ロシアのプーチン首相は、グルジア紛争は、マケイン共和党候補を大統領選挙に勝たせるためのアメリカの陰謀である、とする説を唱えたとの報道がありました。しかしながら、この紛争の経緯を考えますと、やはり、ロシアの言い分には、納得できない部分があるのです。

 第一に、南オセチアアブハジア自治州については、かねてより、ロシアは、住民へのロシア国籍の付与など周到なる準備を進めてきた形跡があり、領土喪失の危機感を募らせてきたのは、グルジア側でした。もちろん、グルジア南オセチアに対する強硬策や軍事行動が適切であったかどうかについては、疑問の余地はありますが、少なくとも、グルジアが、ロシア領に侵攻したわけではありません。あくまでも、自国の領域内での行動なのです。この側面を考えますと、ロシアが、南オセチア情勢に軍事介入したことは、自国民の保護と言えども(しかも、わざわざ予め国籍を与えている!)、国際法において認められる範囲を超えており、ロシアが、意図的に紛争を拡大したことは確かであるからです。

 第二に、もし、プーチン氏が、最初からアメリカの陰謀であることを見抜いていたとするならば(もちろん、情報入手はお手のもののはず・・・)、ロシアは、自ら進んでアメリカに協力したことになってしまいます。国際法に違反して国境を侵犯しながら、それは、相手側の陰謀であったと主張しても、にわかには信じられません。

 第三に、ロシアにとって、対ロ融和派のオバマ氏の大統領当選が望ましいとしますと、マケイン氏の当選を助ける行為に協力することも不可思議です。

 以上より、もしプーチン氏の陰謀の主張が正しければ、ロシアも陰謀の協力者であって、そもそも米ロの対立は存在しないという結論に達してしまうのです。このような認識は、果たして妥当なのでしょうか。この説の真偽は、ロシアが軍を撤退するか、否かによって判断することができるかもしれません。もし、ロシアが、自ら騙されたと言うならば、当然に、軍を引き揚げることができるのですから。

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