時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国家と国民―自己との闘いという課題

 政治が悪いのは誰の責任か、という問いに対して、”政府や政治家が悪い”という意見もあれば、”政治家を選ぶ国民が悪い”、という意見もあります。政治が混迷を深めるほど、醜い責任の擦り付け合いが始まるものです。しかしながら、本当は、両者がともに、自己との闘いを避けてきた結果なのかもしれません。

 痛みを伴う改革や既得権を失うような政策に対しては、誰もが、できることならば避けて通りたいと思うものです。これは、政府も国民も同じであり、自分自身は改革を怠りながら、これを他者の責任に転嫁しているのです。例えば、憲法改正は、現代という時代に日本国の統治制度を合わせるためには不可避でありながら、政府も国民も及び腰です。政治の混乱要因が制度にあるならば、その制度を変えなくては問題が、根本的には解決されないにも拘わらず、変えるという勇気を持てないのです。議論を尽くし、問題を解決してゆこうとする意思を欠き、両者とも、変化への恐れを克服できないならば、何時までたっても状況は改善されません。また、内外に見られる暴力主義に対しても、声をあげて非難しなくては、国際社会や国家の秩序は崩壊してしまいます。内なる良心は、臆病に負けてはならないのです。

 真に難しいのは、自己との闘いであって、他者との闘いではないのかもしれません。外に敵を作ることによって不満を逸らしたり、問題の先送りすることを簡単ですが、自分自身を律し、誤りや欠点を正すことには、相当の覚悟と決断を要するからです。国家にとっても、そうして、国民の一人一人にとっても、来年の課題とは、自己との闘いに思えてならないのです。

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