時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国債増発論はやはり暴論

 本日の日経ビジネスオンラインに、「暴論?あえて問う 国債増発こそ日本を救う」という記事が配信されてきました。長期金利が低い今こそ、大量の国債を発行し、政府が公共事業を実施すれば、景気は回復するという趣旨のようですが、この説、やはり、暴論のように思えるのです。

 経済における数値データには、将来予測が入らないという問題点があります。長期金利が記録的な低水準にあるのは、現時点の数値であって、経済状況が変化すれば、金利が上昇する可能性があります。また、国債の増発には、政府に金利払いの義務が生じることも、無視しているようです。銀行は、預貯金への利息を払うために、国債を購入すると述べていますが、その利息は、利払いとして税から支払われますので、国民の負担は増加します。さらには、公共事業や社会保障分野に予算をつぎ込むことが、実際に、経済成長を促すのか、その確証もないのです。

 加えて、数値データと言いますと、日本国の銀行が保有する国債は、138兆円程とのことあり、この額では、全国債残高の5分の1程でしかありませんので、日銀が70兆円程保有しているとしましても、残りは、一体、誰が保有しているのか?という新たな疑問も浮上します。

 産経新聞では、日本企業が先行していたリチウムイオン電池の分野もまた、韓国の巨額集中投資の前で、液晶パネルと同じ運命を辿ることを危惧する記事が掲載されており、国内に資金需要がないわけではありません。また、長期的な視野に立った研究・技術開発への投資や、円高を生かして、新興国を含む海外での企業の積極的なM&Aに資金を振り向けることもできます。国債に国内資金が集中するよりも、民間部門への資金の流れをつくることこそ、日本を救う道ではないかと思うのです。

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