「進化論」から見えてくる人類共通の脅威: ボノボとチンパンジーの興味深い違い
今日は、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。去る10月12日に、NHKスペシャルにて、「謎の類人猿王国」というTVプログラムが放映され、チンパンジーとボノボの生態について紹介しておりましたので、今日は、このTVプログラムにおいて指摘されている、チンパンジーとボノボとの興味深い違いと進化論との関連について述べさせていただきます。
①ボノボ社会では、オスとメスの地位に大差は無く、何事も、協調的に解決しようとする。一方、チンパンジー社会は、オス中心の社会であり、メスには、一切の社会的地位は無く、また、何事も暴力によっての解決が図られる。
②ボノボのオスは、メスをめぐって争うことは無い。一方、チンパンジーのオスは、群れ内の序列争いと関連してメスを争い、結果的に、チンパンジーの子孫は、その群れにおいて、序列の高いオス、すなわち、ボス猿の子孫のみとなる。したがって、チンパンジー社会では、もっとも凶暴性のあるボス猿の気質を受け継いだチンパンジーが、大量に再生産されてしまう。
このような違いが生じた原因につきましては、ボノボの知能の高さが、‘非暴力社会’の実現に向けられていたことにあるのではないか、と考えることができます。
ボノボは、チンパンジーよりも、知能が高い類人猿です(ボノボは、二足歩行することもある)。ボノボは、その知能の高さゆえの巧妙な方法によって、暴力の原因となる要因を解決して、群れ社会の平和を保っているようなのです。
すなわち、食物不足による暴力的争いは、果実などの多い豊かな土地に生息することによって解決し、あたかも凶暴性の強い子孫の大量再生産を防ぐために、特定のオスにメスを独占させない状況を造りだしているように見えるのです。
人類は、ボノボとチンパンジーのどちらからも進化してはおりませんが、人類を観察してみますと、ボノボ型の人々とチンパンジー型の人々がいるようです。①から③の違いは、案外、人類や人類社会のかかえる問題について考えるのに、参考となるのではないでしょうか。
(続く)
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