時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

人命尊重の人命は誰の人命?

 イスラム国による邦人人質事件が発生して以来、日本国政府は、人命尊重を原則に定め、人質の解放に全力を尽くする方針を示しています。マスコミもまた、人命尊重を強調していますが、人命とは、一体、誰の人命なのか、という問いは不問に付されているように思われます。
 
 福田赳夫首相が述べた”一人の生命は地球よりも重い”という言葉は、地球には、100億近くの人々の生命が息づいてることに思い至りますと、その説得力は、一気に失われます。テロリストの要求に従って一人の生命を救うことが、その他の多数の生命を失わせる結果となる場合、苦渋の選択ながらも、多数の命を救う方を選ぶ人の方が多いのではないでしょうか。人質事件では、将来に起きるテロの犠牲者に思い至りませんと、兎角にその場しのぎで身代金を払いがちです。しかしながら、狂信的な殺人集団に資金を提供すれば、それは、無辜の住民を含む多数の人々の命が無残に失われることを意味します。
 
 人質事件において”人命尊重”に言及するに際しては、現在の人質と将来におけるテロの犠牲者の両者の人命を考慮すべきです。全ての人の命の価値が等しいならば、多数を救うという選択は、頭から非難はできないと思うのです。
 
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