時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

検証なき戦争証言は怪しい

 終戦の日となる8月15日が近付きますと、毎年、マスメディアでは、戦争番組が特集されます。ところが、今年は、安保法案の影響か、殊更に戦争の悲惨さを強調する演出が増えているようにも思えます。

 広島の原爆投下のあった8月6日には、NHKは、原爆投下後間もなく御幸橋で撮影された写真に写っていた被爆者のその後を追う番組を放映しておりました。その中に、90歳を越える男性被爆者が出演しており、”命の選別の場面を見た”として、被爆者移送を目的に現場に駆けつけた軍のトラックについての目撃談を話しておりました。その証言とは、小さな女の子が軍のトラックによじ登ろうとしたところ、軍人に”このトラックは戦争に役立つ若い男だけが乗るのだ。女子供は乗るな!(確か、このようなセリフ…)”と大声で怒鳴ったため、その女の子は、諦めて炎の燃え盛る爆心地の方に走って行った、というものです。軍部が命の選択をしていたとする発言は初耳でしたし、そもそも、この女の子は走れるほど元気なのですから、被爆者であったかどうかも疑問なところです。何かの聞き間違いではないかとも思うのですが(この男性は、被曝によって耳の一部を失っている…)、視聴者は、日本軍が民間の女性や子供を見捨てたとする印象を持ちます(実際には、治療を受けた女性や子供は大勢いる・・・)。

 また、これはBBCで放送された元日本軍看護兵の証言なのですが、このニュース記事では、東京在住で今年93歳になる牧師、マツモト・マサヨシ氏が登場します。氏が勤務していた中国東北部の日本軍には6人の”慰安婦”が存在しており(慰安所がない?)、氏は、月に一度衛生検査を行ったそうです(軍医の職域では?)。そして次に続く証言には、驚愕させられます。何故ならば、”朝鮮人慰安婦は将校専属であり(ここでは、朝鮮女性は被害者ではなく、優遇されていたことになる…)、他の一般の兵隊達は、村々に押し入って「ここに良い女の子はいないか」と叫び、この声に応じない場合は、掠奪、暴行、殺害を働き、捕まえた女性は部隊の駐留地に連行して慰安婦にした”と述べているのです。この行為、ソ連兵と朝鮮兵が戦後の満州で行った残虐行為に類似しているのですが、事実なのでしょうか。氏は、”私は私自身を戦犯と呼んでいる”とも語っています。しかしながら、この行為が事実であれば、この部隊、日本軍の軍法会議での処罰のみならず、連合国の軍事裁判で訴追されたのではないでしょうか。

 慰安婦問題では、韓国人元慰安婦の偽証が問題とされておりますが、日本人とされる人々の証言もまた、確かな検証を経ませんと、国際社会にまで日本国の悪評と誤解が広がる原因となります。ソ連軍や中国軍の捕虜となった日本人兵士は徹底した洗脳を受けていますし、意図的な偽証は特定の政治勢力プロパガンダ戦略の一環の可能性もあるのですから、マスコミは、実体験としての証言と雖も、真偽を確認してから報じるべきと思うのです。

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