時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

五輪エンブレム審査員の擁護は逆効果では?

 疑惑のエンブレムとして既に国民の間で知れわたってしまった佐野氏のデザイン。盗作嫌疑を払拭しようとしてか、審査員代表の永井一正・日本グラフィックデザイナー協会特別顧問が、当デザインが正式にエンブレムとして決定された経緯について新聞社のインタヴューに応えたそうです。

 このインタヴューにおいて、永井氏は、ベルギー人デザイナーの作品とは”似ていない”と断ったうえで、佐野氏の原案は、今日公表されているデザインとは違っていたことを明らかにしています。つまり、原案には、既に商標登録されいたデザインに触れる部分があったため、佐野氏自身が、修正を加えることで今日のエンブレムに至ったというのです。この説明を聞いて、疑いがきれいさっぱりと消えてしまう人は、少ないのではないでしょうか。何故ならば、第一に、オリンピックという大舞台のエンブレムのコンペティションで選ばれた作品が、商標問題において採用後に修正を要するとは、本来、あり得ないからです。逆から見ますと、最初の作品は、”盗作”であったと、堂々と認めるようなものです。第二に、修正を加えたという事実を示せば、”盗作疑惑”が消えると考えるのも、短絡的です。他の作品を見ながら修正する場合もあり得るのですから、修正作品はオリジナル、とする主張も説得力に欠けます。第三に、審査委員が個人として”似ていない”と主観的に判断したとしても、その他大多数の人々が”似ている”と感じている現状では、疑惑を消す効果はほとんど期待薄です。他者の主観を変えることはできないからです。

 このように考えますと、審査員代表の方は、もしかしますと、暗に盗作疑惑を認めたのではないかとさえ思えます。擁護すればするほど疑惑が深まる作品は、やはり、五輪エンブレムには相応しくないのではないでしょうか。

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