時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

テロ擁護論-偽善に満ちた危険思想

 今月13日の晩に、フランスのパリで発生した同時テロ事件について、ネット上で、”フランスが悪い”とする意見が散見されることには驚かされます。

 フランス批判の根拠は、大きく分けて二つあります。その一つは、移民が阻害されているフランス社会にテロ原因を求めるものです。もう一つは、フランスのISに対する空爆こそ、復讐の連鎖としてIS側の今般のテロを招いたとする説です。しかしながら、これらの根拠は、ISによる無差別テロを正当化できないのではないでしょうか。第一の環境説は、移民問題はどの国にありながら、テロ集団と化すのはイスラム過激派といった一部に限られていますので、説得力がありません。むしろ、フランスには自由と寛容の国としての気風がありますので、イスラム系の移民が居住国に馴染まなかったとしても、フランスばかりをテロの原因として責めるのは酷なように思われます。第二の報復の連鎖説については、一連の事件の発端が、テロリスト側にあったことを思い起こす必要があります。シリアやイラク等において武装組織であるISが占領地を広げ、住民に対して暴力による恐怖政治を敷き始めたところに事件の始まりがあるのです。

 フランスを批判する人々は、住民や異教徒の虐殺や奴隷化を伴うISの残酷なる支配を認めることが、平和的解決方法と考えているのでしょうか。また、社会に対する不満から過激思想に走り、無関係な他者を殺害する行為を容認するのでしょうか。仮に正当化できる考えているとしますと、一見、寛容に見えるその思想こそ、偽善に満ちた危険思想なのではないかと思うのです。

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