『China 2049』と『吉備大臣入唐絵巻』から見えてくる中国の『兵法三十六計』の脅威(パート3)
今日は、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。今回も、昨今、反響を呼んでおります『China 2049』に関連して、『吉備大臣入唐絵巻』から見えてくる中国問題を扱います。
さて、マイケル・ピルズベリー氏は、その著書の序章となる文章を「瞞天渡海」ではじめておりますが、次に、「中国の夢」というタイトルのその第1章を「天無二日 土無二王」という言葉ではじめております。「天無二日 土無二王」の意味は、「天に二つの太陽はない 地には二人の王はいない」という意味であり、ピルズベリー氏は、この意味について、「世界秩序は、本質的にヒエラルキーを成す。そして、その頂点には、常に唯一の統治者が存在するのだ」と解説しておられます。
ピルズベリー氏に依りますと、1950年代、毛沢東をはじめとした中国共産党の指導者は、しばしば世界支配について語り、「英国を追い越し、アメリカに追いつく」というスローガンを掲げましたが、西側には、このような中国共産党の言動を真剣に捉えた人は、ほとんどおらず、中国共産党の誇大妄想や、ナショナリズムの熱をかきたてる無害な大言としてしか、認識されていないかったそうです。ところが、中国共産党は、「天無二日 土無二王」という言葉を本気で信じており、中国共産党が、世界における唯一の支配者となることを、当然のこととして、夢見ているそうなのです。
「天無二日 土無二王」という言葉は、諸国間の調和を謳う今日の国際協調主義に反する考え方であり、現在では、通用しない、むしろ、非難されるべき考え方であると言うことができます。仮に、暴力革命を容認する共産主義思想の権力体が、世界の支配者となったといたしますと、世界は、黙示録に描かれているような地獄のような世界となってしまうことでしょう。しかしながら、「天無二日 土無二王」を当然と考える中国は、1949年から100年をかけて、中国共産党による世界支配を現実化させようと狙っており、2049年が、その完成予定の年である、と、このようにピルズベリー氏は、中国の脅威を説明しておられるのです。
翻って、『吉備大臣入唐絵巻』におきまして、吉備大臣が、中国大陸で、高楼に閉じ込められてしまう理由は、吉備大臣が、頭脳明晰で、何事にも秀でた逸材であったことにあり、中国人は、吉備大臣に‘見劣り’してしまうことを嫌い、吉備大臣を、排除しようとしたからです。絵巻におきまして、吉備大臣には、日本国が投影されていることは、当然のことです。
8世紀頃に成立した絵巻のストーリーは、古代におきましても、中国は、やはり「天に二つの太陽はない 地には二人の王はいない」という考えの持ち主であったことを示しております。現在に至りましても、こうした中国の体質は変わっておらず、「天に二つの太陽はない 地には二人の王はいない」という言葉のとおりに、世界の唯一の支配者となるという夢を実現させるために、中国共産党は、あらゆる手段を講じて(卑怯な手段や残忍な手段も含め)、ライバルの排除を行ってくる可能性がある、と言うことができるでしょう。
よろしければ、クリックをお願い申し上げます。
(続く)