時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

レッドカーペットなきオバマ大統領の訪中の吉凶

 G20の開催地である杭州の空港には参加各国の首脳が降り立ち、全ての首脳が、開催国の要人達の出迎える中を、颯爽とレッドカーペットを歩くものと予想されていました。ところが、アメリカのオバマ大統領には、レッドカーペットどころか、タラップさえも準備されていなかったというのです。

 中国側の露骨なオバマ大統領に対する冷遇は、おそらく、中国側のアメリカに対する強いメッセージが込められていたものと予測されます。そのメッセージとは、南シナ海東シナ海におけるアメリカの”介入”、さらには、韓国へのTHAAD配備に対する反対の意思表示であり、特に、南シナ海問題に関する仲裁判決の受け入れを迫られる事態を避けたかったのでしょう。安倍首相に対しても、習主席は、”言動を慎むように”と述べており、中国は、相手国を威圧することこそ、最善の策と見ているようです。

 しかしながら、こうした手法は、たとえ中国の国内では効果はあっても、今日の国際社会では、逆効果となります。仲裁判決の拒絶で無法国家のイメージが定着しつつある中、今般の一件も、米中関係の悪化が印象付けられたと共に、’中国は陰湿で非礼な嫌がらせを常とする国である’とする見方を自ら広げる結果となりました。中国は、国際社会における孤立化を怖れているとされながら、こうした行為を見れば、どの国も、中国から距離を置こうとすることでしょう。

 そして、実のところ、米中対立の表面化は、日本国にとりましては安心材料ともなりました。何故ならば、頭越しの米中関係の改善や打算的な妥協こそ、日本国が最も恐れていたシナリオであったからです。たとえレッドカーペットを歩くことができなくとも、中国の横暴を許さないとする米国の一貫した姿勢こそが、法の支配の確立を目指す国際社会に安心感を与えているのではないでしょうか。

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