時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

『2061年宇宙の旅』が描く未来像の‘斑実現’

  今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。『2061年宇宙の旅(『2061年2061: Odyssey Three』)』は、2061年までに、地球上において長距離通話料金の廃止によってあらゆる電話は市内通話となり、人類種族は自らをお喋り好きの巨大な家族に変貌させ、敵対する国家は、「“平和の人質”運動」とも称せる観光旅行客(富豪・特権階級・権力者の男女をほぼ同数含む)の相互訪問によって戦争を仕掛けることができなくなり、さらに、核兵器廃絶運動によって残った50個の核兵器は、すべて国際管理のもとに置かれることで、平和が保たれるようになると記述しております。
 
このようなSF小説の未来像も、現実の動きと一致していることは、世界レベルにおけるスマートフォン・携帯電話の普及による‘おしゃべり文化’の拡大、観光客の増大と観光業の隆盛、そして、核兵器禁止条約などの核兵器廃絶運動において明らかであると言うことができます。予測された未来には今日のような国民国家は存在しておらず(マルクスの国家消滅論にも通じる…)、国際体系としての国民国家体系も消滅しているのです。
 
しかしながら、このような未来像は、‘平和で理想的世界’に見えますが、視点を変えてその意味するところを見て見ますと、イルミナティーによる恐怖の支配という未来像が見えてくるかもしれません。
 
昨今、スマートホンの頻繁な使用は、電磁波の脳への打撃が懸念されており、脳機能の低下による人類の思考レベルの劣化が齎される可能性があります。また、「人類種族は自らを、お喋り好きの巨大な家族に変貌」した未来の人類は、沈思黙考するような理性的な人類像とかけ離れた軽薄な人類であると言えるかもしれません。おしゃべりに時間を使ってしまっては、知識を蓄積するための勉強・研究する時間も減少することになりましょう。観光にしましても、日本各地の旧所・名跡景勝地に押し寄せてくるあまりに多くの中国人観光客が、その風情を損なわせているとの非難もあります。すなわち、文化破壊運動と繋がってくることにもなるのです。さらに、核廃絶運動にいたしましても、本ブログにて、再三にわたり指摘しておりますように、核廃絶後に唯一核兵器保有しえる組織が、世界を支配する可能性があり、この小説のいう「国際管理」の主体が、仮に、イルミナティーであった場合、それは、国家の廃絶を伴うイルミナティーによる世界支配の実現を意味していることになるでしょう。
 
『2061年宇宙の旅(『2061年2061: Odyssey Three』)』は、未来の世界を、その知力や希少資源のすべてを、他の惑星に移住できるほどに発展した宇宙開発のみに集中できる’平和な世界’として描いておりますが、よくよく小説に描かれた未来像に検証を加えてみますと、イルミナティーの人類の非文明化・動物化・家畜化といった目的に適った未来像となっていると言えるでしょう。
 
そして、現実の世界を眺めてみますと、実現していそうでそうではなく、そこには、計画通りに進めようとしても、計画通りには進まない、いわば中途半端な‘斑実現’となっている現状を見ることができる気がいたします。

 
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(続く)