時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ヤヌスの顔を持つ核兵器

 日本国は、世界唯一の被爆国であり、無辜の国民の命が一瞬の閃光とともに失われたという悲惨な経験を持ちます。かくも悲しく無残な記憶として、8月のあの日の被爆体験は、日本国民の心に深い傷を残すことになりました。今でも、被爆地を訪れますと、空が、高く青く澄みわたればわたるほどに、何故か、無性に悲しくなって、涙が頬をこぼれおちてしまうのです。
 日本国が、核兵器に強く反対する原点は、被爆国の経験にあります。しかしながら、核兵器は必要悪であるとする主張もないわけではありません。第三次世界大戦が起こらなかった理由は、核戦争の使用が、即、相互破壊による人類滅亡を意味したからである、とも言われているのです。人の命を奪い、かつ、人の命を守る兵器。これが、核兵器ヤヌスの顔です。
 このヤヌスの顔の二面性を無視した議論をしては、結局、議論は、いつまでも平行線をたどることとなりましょう。