時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日本国核武装の大前提はNPT条約の改正

 近年、北朝鮮の核保有が現実味を帯びる中で、日本国においても核武装が議論されるようになりました。しかしながら、この問題について議論するに先だって確認しておくべきことは、核兵器を合法的に保有するには、NPT条約の改正が必要である、ということです。

 NPT条約の第8条1項には、”いずれの締約国も、この条約の改正を提案できる”とあります。将来的に、テロ支援国家に核が拡散し、NPT体制そのものが崩壊する状況に陥るような場合には、締約国である日本国政府は、非核保有国の安全保障について、核保有をも選択肢とした提案をなすことができるのです。もし、この手続きを抜いて日本国が核を保有するということになりますと、北朝鮮やイランと同類の無法国家のレッテルが貼られてしまうことになりましょう。これは、あまりに不名誉なことです。

 本当のところ、この問題を語ろうとすれば、自国の核保有のみならず、アメリカの核の傘や核の抑止力の承認という極めてセンシティブな側面についても触れなくてはなりません。現在の日本国が、この問題を正面から論じられるほど冷静であるのかどうか、そのことが心配なのです。