時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

社会主義路線をひた走る民主党

 これまで矢継ぎ早に社会保障拡充政策を打ち出してきた民主党は、ついに、育児手当の一律月2万6千円の給付という大胆な案を提示するに至りました。こうした社会主義路線は、政策の表面だけを見ますと国民に”やさしい政策”のように見受けられますが、実際には、日本国を蝕む危険性を秘めているのように思うのです。

 第一に、これらの政策を実施するためには、莫大な財源を要します。結果として、増税が不可避となるのでしょうから、朝三暮四となりかねません。しかも、政府の所得再分配機能の強化は、当然に”大きな政府”に繋がりますので、単に、国家権力の強化と財政規模の巨大化しかもたらさないかもしれないのです。

 第二に、”揺り籠から墓場まで”の高福祉高負担政策は、ヨーロッパ諸国において既に失敗の事例があります。1970年代に、こうした政策が、国民の勤労意欲の低下、給付目当てのモラル・ハザード、企業家精神の喪失など、経済活動の停滞と失業を発生させることが実証されているのです。人間の本質を考慮しますと、国民が、自立精神や活動意欲を持ち続けることができる環境を整える方が、国家の健全な発展と繁栄に繋がると言うことができましょう。

 第三に、国民の精神性にとりましても、必ずしも良い影響を与えないかもしれません。社会全体が子育てから老後までの面倒を全部見る、ということになりますと、無責任な親や子供が大量に出現してしまうかもしれないのです。

 以上に指摘しましたように、安易な社会主義政策は、国民に対して一種の政治的な”麻薬”として作用し、国家の衰退という”安楽死”を招くかもしれないのです。