時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

集団的自衛権の行使は同盟の基礎

 昨日の海上配備型スタンダード・ミサイル(SM3)の迎撃実験成功を受けて、政界でも、集団的自衛権の行使に関する議論が再び活発になりそうです。集団的自衛権はあるけれれども使えない、という解釈は、同盟そのものを否定することになるのではないか、と思うのです。

 そもそも、この政府見解は、国民によって選ばれた政府の政治的な判断ではなく、内閣法制局の見解であるということから、その効力は、以前より疑問視されてきました。内閣法制局が国家の命運を左右する政治的決定を行うとしますと、行政機関が政府に優位することになり、行政の越権行為になりかねないからです。

 こうした権限の所在の問題に加えまして、集団的自衛権の行使を否定することは、必然的に、同盟国と共に防衛を含めた軍事行動をとることができないことを意味してしまいます。特に、今回のミサイル防衛システムで問題になっているのは、同盟国であるアメリカに向けて発射されたミサイルを、自衛隊が撃ち落とすことができない、という点です。同盟国が他国から直接攻撃を受けても知らんぷり、となりますと、同盟関係は、もはや成り立ちようもありません。しかも、同盟国本土への直接攻撃なのですから(日米安保条約第5条では、”日本国の施政下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が・・・”とありますので、少なくとも日本国領域内を通過するミサイルは、条約の定める共同防衛の範疇にある・・・)。

 日本国は、日米同盟を基礎にして、自国の防衛、および、地域の安定を追求しています。この目的を達成するためには、集団的自衛権の行使は、同然、認めなくてはならないのではないか、と思うのです。