時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

本当の怖さは北京オリンピック後にやってくる

 本日中国北京の人民大会堂で開かれた日中首相会談では、環境や科学技術の分野における協力拡大が合意されたと言います。高度な技術力を唯一の競争力とする日本にとりまして、台頭する中国が、低コストに加えて技術力を持つことは(鬼に金棒!)、自国産業の衰退を意味しますので、歓迎すべき合意ではないのですが、こうした日中友好路線は、北京オリンピックを境に変化を見せるかもしれません。

 何故ならば、中国の日本国に対するソフト路線は、期限付きである可能性があるからです。北京オリンピックを来年に控えた中国にとりまして、第一に優先する課題は、この国際的なイベントであるオリンピックの成功です。ナチス・ドイツが大々的に利用しましたように、オリンピックは、今でも国威発揚の絶好のチャンスです。そこで、モスクワ・オリンピックで起きたような西側諸国によるボイコットが起きないように、中国政府は、内外からの批判が集まらないよう、周到に友好・懐柔政策を進めていると考えられるのです。しかしながら、北京オリンピックが、成功裏に閉幕するとしますと、もはや、こうした気遣いはいりません。もちろん、日本国もボイコットという外交圧力のカードを失います。こうなりますと、中国政府は、周辺諸国に対して、より強圧的な態度に出るかもしれませんし、チベットウイグルのみならず、国内の民主化運動に対する弾圧をも強めるかもしれません。このことは、東アジアに緊張をもたらすとともに、中国国内も動揺をもたらすことになりましょう。

 本当の怖さは、北京オリンピック後にやってきます。日本国は、充分にその変動に応えるための準備を整えておくべきであると思うのです。