時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

沖縄県民の名誉のもう一つの守り方

 高校の教科書における沖縄戦の集団自決の記述につきましては、9月29日に開催された沖縄県民大会での反発を受けて、軍の強制性があったかのような記述が復活すると言います。沖縄県民の感情を配慮してとのことですが、軍による強制性を殊更に強調することが、本当に沖縄県民の名誉を守ることになるのか、疑問に思えてならないのです。

 何故ならば、沖縄県民の中には、戦場という極限状態にあって、本土の日本人以上に立派な覚悟をもって、名誉の死を選ばれた方々がおられたと思われるからです。現代に生きる人々の感覚では、名誉の死など意味のないものかもしれませんし、理解もできないことかもしれません。しかしながら、当時の日本には、虐殺などによって辱めを受けるより、自ら死を選ぶことを名誉とする考え方が、確かに存在していたのです。これは、日本古来の武士道精神に源があるのかもしれませんし、日本人固有の考え方なのかもしれません。強制性ばかりを強調しますと、自決された方々が死を賭して守りぬいた名誉を、後の世の人々が、現代の価値観を持ち出して、奪ってしまうことになるのではないでしょうか。

 現代に生きる私達は、当時の沖縄の人々の名誉を重んじこそすれ、”強制された不名誉な死”という一方的な解釈を押し付けてはならないと思うのです。