時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ETFの金融新商品は大丈夫?

 金融庁は、原油先物価格や不動産投資信託REIT)と連動する新たなタイプのETFの設定を許可する方針と言います(本日付日経新聞朝刊)。果たして、これらの商品は、”安全”なのでしょうか?

 ”安全”と言いましても、金融商品の購入者に対する”安全”と、市場全般に対する”安全”との二種類があります。ETFの購入者に対する安全度は、購入者が変動のリスク負担を負うという側面においては、他の金融商品とはかわりはありません。しかしながら、もう一方の市場に対する安全度を見てみますと、ETFのうち、原油先物価格や不動産投資信託などと連動した商品の場合には、これは、市場、あるいは、経済全般に、思わぬリスクが発生する可能性を持っています。つまり、これらのETFは、市場に対する安全性が低いのです。これは、こうした商品が、原油価格の高騰や不動産バブルといった波乱要因となりやすく、市場のメカニズムにあって連鎖的な破壊効果を持ちかねないからです。サブプライム・ローン問題もまた、不動産ローンの金融商品化の結果として発生したことを忘れてはならないと言えましょう。

 金融新商品の開発そのものは、市場における金融機能の強化と多様化にとって望ましいものですが、”安全性”が懸念される場合には、慎重に検討することが必要なように思うのです。市場は、連鎖性を持ちますので、部分的な失敗が、メカニズム全体を危機に陥らせる可能性もあるのですから。