時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

金融市場改革には慎重に

 つい最近まで、国際競争力を強化するために、証券市場、商品市場、外国為替市場の垣根をなくし(将来的には排出権取引市場も?)、総合市場を造ろうとする改革案が提案されていました。しかしながら、経済を取り巻く状況が大きく変化した現状にあって、はたしてこの改革は、このまま進めるべきなのでしょうか。

 原油価格や食料価格の高騰の一因には、ファイアー・ウォールの役割を果たしてきた市場間の垣根の撤廃があります。サブプライム・ローン問題の発生で行き場を失った資金が、何の障壁もなく投機資金として商品先物市場に流入したため、急激な商品価格の値上がりを招いてしまったのです。その元凶となったサブプライム・ローンもまた、住宅ローンの小口証券化という手法を見ますと、不動産市場と証券市場との一体化と見ることもできます。市場間に設けられていた安全装置とも言うべき障壁がなくなったことで、金融のシステミック・リスクは高まり、連鎖のスピードも速くなってしまったのではないでしょうか。

 先駆的な試みも時には失敗することがあり、欠点が明らかになった以上は、後に続くものは、同じ失敗の繰り返えしを避けなくてはなりません。日本国にあっても、金融市場の総合化については、今回の金融危機の制度的な原因を見極めて、金融市場改革は、慎重に行うべきではないかと思うのです。

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