時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

人権擁護法案と国連の介入主義

 人権擁護法案については、国会への提出が何度も見送られた経緯があり、しかも、国民の多くが反対していながら、何故にこうもこの問題が蒸し返されるのか、とても不思議に思ってきました。そうしたところ、本日、新聞記事を読んで、この疑問への答えの一端が見えてきたのです。

 それは、1993年に国連総会で採択されたパリ原則があったからです(本日付産経新聞朝刊)。新聞記事が報じますように、このパリ原則は、現在検討されている人権擁護法案よりも、はるかに内容は穏便なうですが、各国に対して、人権擁護のために、独立性のある国内機関の設置を求めているというのです。

 考えてみますと、国連が、国内組織に介入することは越権行為に思えますし、また、個々人の基本的な自由や権利を守るためには、警察機構や司法の独立を確実に制度化した方が、はるかに効果は高いはずです。共産主義国や途上国などでは、こうした機関の独立さえままならぬ国はたくさんあるのですから。にもかかわらず、国連が、こうした原則を採択したことは、まことに理解しがたいことなのです。

 日本国では、国連に対する幻想が強く、とかくに、完全無欠な判断をするものと信じがちですが、パリ原則に見られますように、むしろ、国内法化すると、基本的な自由や権利を侵害し、監視社会が形成されることを手助けすることにもなりかねない場合もあります。やはり、日本国民は、自らでよくよく考えて、結論を出すべきではないでしょうか。