時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

予防的先制攻撃―何も書かないほうがよいのでは

 新聞報道によりますと、自民党の国防関係合同会議が起草した「防衛計画の大綱」への提言において、北朝鮮を念頭に置いた敵基地攻撃について、「予防的先制攻撃」は行わないという一文を追加したと伝えられています。しかしながら、この一文は書かないほうがよいのではないかと思うのです。

 何故ならば、周辺諸国からの脅威を目前として、我が国が何らかの防衛措置を取らなければならない事態が発生した場合、幅広いオプションを用意していた方が安全を高めるからです。相手国もまた、日本国に照準を合わせたミサイルを発射基地に装備した場合、日本国から自国の基地を攻撃されるという可能性があれば、この行為には慎重になります。ここで日本国が、基地の攻撃はしない、と言い切ってしまいますと、むしろ、抑止力が働かなくなるのです。

 予防的先制攻撃については、”脅威が顕在化する前の攻撃”とする解釈がありますので(本日付産経新聞朝刊)、”脅威が顕在化した後の攻撃”については、国際法上、正当防衛として認められることになりましょう。しかしながら、わざわざ誓約の如くに”予防的先制攻撃を行わない”と書く必要はなく、むしろ、自らの選択の範囲を狭めるとともに、相手国による瀬戸際作戦や武力による威嚇を許容する結果を招くのではないか、と危惧するのです。

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