時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

中東の民主化懐疑論への懐疑

 中東諸国の民主化運動に対して、我が国の政権交代を事例に挙げて、国民の一時的な熱狂は、より悪い状況に至るものとして、懐疑的に見る向きもあるようです。しかしながら、両者の間には、決定的な違いがあると思うのです。

 それは、我が国の場合には、政権交代を煽り、国民を誘導する機関としてマスコミが介在しましたが、中東の場合には、ツイッターフェースブックといったソーシャル・ネットワークを通した国民の自発的な情報交換によって民主化が実現したことです。独裁国家では、マスコミは、政府の宣伝機関であり、全く信用ができません。そこで、国民間の情報網、つまり、国民の間の危機意識や政府に対する不満の自然な共有が、独裁体制を崩壊に導いたのです。

 この違いは、我が国の政権交代が、マスコミの影響力を抜きにした、国民の自発的な意思に基づくものであったのか、という疑問をも提起します。もちろん、中東諸国の民主化も、独裁体制が長期間続いたこともあり、一筋縄ではいかない難しさもあるでしょうが、国民が自らの意思で参加したことに、希望を見出すことができるのではないでしょうか。

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