時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

福島第1原発事故―原子力発電は即刻やめるべきか

 今なお、福島第1原子力発電所の現場では、自衛隊消防庁、警察、東電、東電関連会社、東芝や日立の技術陣など、我が国の命運を背負った方々が、懸命な作業を続けられております。今日を無事に過ごせるのも、作業をされている方々の努力と不屈の精神あってのことであり、私を含め、国民の多くは、その頑張りに敬意を表しております。

 この事故により、原発周辺の住民の方々も避難を余儀なくされ、また、放射性物質の拡散が、周辺一帯の土壌、大気、海を汚染し、多くの人々に健康被害を与えるものと危惧されております。このため、原発事故の危険性に鑑みて、我が国に建設されている原発の運転を即時に停止すべき、とする意見も聞かれるようになりました。事態の深刻さを考えますと、当然の意見なのですが、代替となるエネルギーがない状態で原発を一斉停止させますと、被災していない地域を含めて、我が国の産業を、一気に衰退させることになります。また、被災地の復旧や国民の日常生活にも多大な不便が生じ、全国的な”計画停電”はさらなる混乱を招くことになります。当面は、現存する原発については、如何なる災害、攻撃、テロにも対処できるよう、安全性と防備の強化に努め(新式の原子炉は事故を起こした原子炉よりは安全に設計されているらしい…)、今後のエネルギー政策については、原子力発電の安全性の再検討と代替エネルギー技術の可能性などと併せて議論すべきと思うのです。

 原発の見直しは、脱石油の掛け声の下で推進してきた電気自動車の普及といった、電気の大量供給を前提としたこれまでの路線にも影響を与えますので、産業、あるいは、人間の生活様式全体の問題でもあります。将来的には、より安全なエネルギー技術の研究開発が急がれるのでしょうが(常温核融合…?)、少なくとも、原発即時停止論は、震災に追い打ちをかけることになりかねないのではないでしょうか。

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