時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

原発事故―結局は国民負担の理不尽

 現在の我が国の電力会社は、地域ごとに設立されており、競合する企業がいない、という面において特殊な企業となっています(戦前には、複数の電力会社が設立されていた・・・)。このため、住民は、電力の供給を一社に依存せざるをえず、事故が発生しても、他の電力会社に切り替えることはできません。

 3月11日に発生した地震津波により、福島第1原発が事故を起こし、現在、第2原発とともに、運転が停止されています。このため、関東一帯が電力不足に陥るとともに、放射能漏れによる被害が、福島県のみならず、近接する県にも及ぶことになりました。原発事故は、政府と東電の初動体制の遅れや判断ミスによる側面が強く、人災と指摘されています。この結果、東電の管轄圏内の全ての人々が被害を蒙ることになったのです。しかしながら、東電が、電力供給事業を独占している以上、被害から生じる負担は、全て、国民にのしかかってくることになります。東電が、直接被害を受けた周辺の住民の方々に支払う巨額の賠償金も、電力料金に上乗せされますし、政府が支出する補償金も、国民が納税した国庫から支払われます。たとえ全員を原告とする集団訴訟が起こされ、賠償金の支払いが認められたとしても、その負担者は、国民自身なのです。

 東電の国有化が囁かれ、政府や東電の幹部が責任をとることにはなりますが、一般の国民は、被害が補償されるどころか、さらなる負担が待ち受けています。これでは、あまりに理不尽ではないかと思うのです。

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