時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日中韓FTAの危険度

 本日、野田首相は、日中韓FTAについて、交渉の開始に合意したとも、検討の推進を確認したとも報じられています。TPPには、反対論もあるのですが、この日中韓FTAの方が、はるかに危険度が高いのではないかと思うのです。

 第1に、TPPとは逆に、中韓は、投資家保護、知的財産権の保障、紛争解決の制度づくりといった、外国企業の権利尊重に熱心に取り組まない可能性があります。中国も韓国も、自国企業優遇策を実施しており、日本企業の権利が侵害されても、充分な救済措置が存在しない状態となりかねません。

 第2に、中国と韓国は、輸出競争力を強化するために、自国通貨安政策を実施していることです。近年、日本企業のシェアは、低下傾向にありますが、その第一の原因は、中韓の通貨政策が指摘されています。この状態を維持したまま、自由貿易圏を形成しますと、日本国は、圧倒的に不利となります。

 第3に、投資分野の自由化を行いますと、政府系ファンドを擁するチャイナ・マネーが日本企業を襲う可能性もあります。しかも、目的が、日本企業の技術力となりますと、日本企業は、技術面における優位も保てなくなります。

 第4に、中国も韓国も、公平な国際的なルール造りの経験に乏しく、法治ではなく、人治となるかもしれません。しかも、反日政策を継続しているのですから、経済で問題が発生した場合、政治的な圧力を受けるかもしれないのです。

 第5に、三国とも、輸出志向という意味においてライバル関係にあります。棲み分けが成立しない場合には、熾烈な潰し合いとなる可能性もあるのです。コスト競争においては、日本企業は劣位にありますので、一方的に不利な闘いを強いられることになると予測されるのです(為替操作も加われば、さらに不利に…)。

 第6に、無関税の安価な中国製品の流入は、日本市場に価格破壊をもたらすかもしれません。白物をはじめ、中国や韓国の製品は、品質においても日本製品に追いついてきています。

 以上に述べたように、日中韓FTAは、相当に危険度が高いと思うのですが、TPPほどには、反対の声が聞こえないのは、何故なのでしょうか。

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