時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

冷戦の歴史を飛ばしたい中国

 最近、中国は、国際社会に対して第二次世界大戦において連合国の一員であったことを強調し始めているようです。ベルリンを訪問していた李克強首相の、ポツダム宣言に触れて尖閣諸島の領有を主張した発言も、連合国を意識したものです。

 ところが、現実は、簡単に、第二次世界大戦末期にワープできるものではありません。そもそも、中華人民共和国という国は、共産党軍が国民党軍との内戦に勝利したことで、戦後の1949年に誕生した国であって、連合国の一員ではあったのは中華民国です。しかも、戦争末期から、既に東西冷戦は表面化しており、1950年に勃発した朝鮮戦争では、中国は、義勇兵を派兵することで、”国連軍”と戦っております。中国は、国連を連合国と理解してるようですが、その連合国と干戈を交えたのは、他ならぬ中国なのです。第二次世界大戦は、およそ5年を以って終結しますが、自由主義国対社会共産主義国の対立構図からしますと、ヨーロッパでは冷戦は終結したとしても、その期間は、今日に至るまで67年を数えております。第二次世界大戦よりも、はるかに長期にわたって、冷戦構造における対立関係が継続してきたのです。

 戦後の冷戦の歴史を飛ばして、今さら中国が、連合国の一員であった歴史を持ち出したとしても、第二次世界大戦時のような、軍事同盟さえ存在していないのですから、少なくとも自由主義国は、中国を”味方”とは見なさないのではないでしょうか。都合良く時代をワープさせて、過去の現代に持ち込む中国の時代感覚は、国際社会を混乱させるばかりと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。

<a href="https://blog.with2.net/in.php?626231">人気ブログランキングへ</a>