時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日本国は中国に”戦争賠償”している

 今日に至るまで、中国が、日本国からの戦争賠償金の請求権を放棄したことは、美談となってきました。そしてそれは、日本国の中国に対する負い目でもあったのです。

 1972年9月29日、日中共同声明が公表されましたが、その5において、「中華人民共和国政府は、日中両国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」と宣言されています。そして、1978年の日中平和友好条約締結に際しても、前文において、共同声明に示された諸原則が厳格に遵守されることが確認されたのです。この時、中国の寛大な態度に感動した日本人も少なくありませんでした。こうして、条約に基づく形態としては、中国に対して戦争賠償は支払われなかったのです。しかしながら、つい、忘れられがちなのですが、実際には、満州などに残した日本国、並びに、日本人の在外資産を中国に引き渡しております。その額、外務省の調査によると、1945年8月の時点で、2386億8700万円にも上るのです。この額は、東南アジア諸国への金銭による戦争賠償と比較しても、一国としては最高額です。加えて、中間賠償として、中国は、工場施設なども日本国から受け取っているのです。近年の中国の急速な経済発展が、かつて満州国があった地から始まったのも、理由がないことではありません。

 その後、日本国は、戦争賠償の代わりを名目として、中国に対して数兆円ともされる多額のODAも供与してきたのですから、中国に対しては、十分に償いを尽くしてきたといっても過言ではありません。日本国は、この件に関して、中国に対して負い目を感じる必要は、もはや、ないと思うのです。

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