時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

慰安婦問題は歴史問題ではなく請求権問題

 慰安婦問題については、中韓のみならず、国際社会でも、一般的には”歴史問題”として扱われております。しかしながら、この扱いこそ、慰安婦問題の本質を見誤る元凶なのではないかと思うのです。

 中国はさておき、この問題に関する韓国の要求とは、日本国に対する謝罪と賠償です。国際的には、他国に賠償を求める以上、法的な根拠が必要ですし、また、当然に、個別具体的な被害が証明されなければなりません。ところが、韓国は、日本国と交戦しておらず、戦勝国でもなければ、戦争被害を受けたわけでもありませんでした。このため、「日本国との平和条約」では、韓国に賠償を受け取る権利を認めず、双方の財産権に関する請求権の問題だけは後日処理するものとしたのです。この請求権は、1965年の日韓請求権協定で解決されますが、少なくとも、韓国には、慰安婦問題に関して日本国に対して請求する法的な根拠が皆無です。しかも、被害が事実であることさえ立証できないのですから、正々堂々と請求権とは言い出せないのです。そこで、”歴史問題”や”歴史認識”なる言葉を用いて、法的枠外において日本国に対して新たな請求を行うことを試みたのではないかと推測するのです。つまり、これらの言葉は、被害立証なき賠償に向けての”戦略用語”なのです。

 慰安婦問題を法的問題として扱うのであれば、国際仲裁や国際司法裁判所での解決が相応しいのですが、巧妙に歴史問題にすり替えられたため、歴史学の領域と見なされるようにもなりました。仮に、歴史学者がこの問題に関わるとすれば、厳正で客観的な検証作業を通した”事実認定”の部分となるのでしょう。ところが、歴史学者からは、韓国の意を汲んでか、内外ともにイデオロギー色の強い声明ばかりが発表されているのです。一度原点に戻って、慰安婦問題を請求権問題として仕切り直しますと、案外、容易に問題は解決されるのではないかと思うのです(判決による韓国の訴えの却下…)。

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