時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

アメリカの民間機の事前通告容認

 ニューヨーク・タイムズの報道によりますと、アメリカ政府は、中国が設定した防空識別圏ADIZ)に関連し、民間航空機の飛行予定の中国への事前通告を航空会社に促す方針とのことです。この問題に対して、日米両国は協力を約してきましたので、果たして、日本国は、”はじご”を外されてしまったのでしょうか。

 この情報、未確認の部分が多く慎重な判断を要しますが、ADIZの仕組みを考えますと、アメリカが、中国の言い分を丸ごとと認めたとは言えないようです。ADIZとは、そもそも、圏内を飛行する民間航空機の位置、ルート、飛行のタイム・スケジュールなどを事前に把握することで、国籍不明機を発見し、これを適性機と見なしてスクラブルをかけるシステムです。全世界でADIZを設定している国は、10程度を数えますが、通告の対象は、あくまでも民間機です。民間機のみを通告の対象としたことで、アメリカ政府が、中国が要求した軍用機の事前通告を拒否したことが分かりますが、ADIZの設定については、日米も含めて他の諸国も設定しておりますので、中国のADIZの全面的な否定ではなく、アメリカは、今後、日本国のADIZとの重複部分の削除、尖閣諸島の領空部分の除外、および、中国軍の軍事管轄権の否定などを主たる対中要求の目的に据えた可能性もあります。

 中国のADIZ問題は予断を許しませんが、少なくとも、アメリカ政府の事前通告容認の判断は、日米離反と捉えるのは早計ではないかと思うのです。

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