時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

「美味しんぼ」の無責任-真実である立証を

 販売数が30万部ともされるコミック誌に掲載されている人気漫画「美味しんぼ」。この漫画に原発事故による福島県放射能汚染状況や健康被害が”事実”として描かれたことから、ネット上では、賛否両論の激論が繰り広げられています。
 
 作者の雁屋氏は、”取材に基づいた真実しか書いていない”と主張しておりますが、大阪市がれき処理施設の周辺住民の調査への疑問や、子供の鼻血の出血率は福島よりも福岡の方が高いといった事実が判明し、この言葉の信頼性は失われつつあります。現地での取材をもとに制作したのは事実なのでしょうが、証言や伝聞を以って事実と強弁されても、読者は判断に迷います。取材=事実ではないからです。”慰安婦問題”も、裏付けのない証言が事実として宣伝されたため、日本国の名誉が著しく傷つけられる結果となりました。フランスのアングレームで開催された国際漫画祭でも、漫画は”慰安婦”の既成事実化の道具と化しており、これらの経験から、日本国民の多くは、明確な証拠のない宣伝漫画には懐疑的にならざるを得ないのです。
 
 「美味しんぼ」を擁護する人々は、政府を含む批判者に対して言論弾圧を行っていると訴えていますが、それでは、前双葉町長の発言のように”福島は人が住めない”ほど、汚染されていることを、明確なデータや証拠を以って立証できるのでしょうか。確たる証拠が示せないならば、福島県の人々に風評被害を与えるとする批判は甘受すべきです。言論の自由は無制限ではなく、虚偽の情報によって他者に損害を与える行為は、無責任な自由の濫用であると思うのです。
 
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