時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

尖閣諸島-日本からのICJ提訴=領土問題化ではないのでは

 先日、産経新聞アメリカのアジア政策専門家のラリー・ニクシュ氏の「尖閣提訴6つの利点」と題する記事が掲載されたことから、日本国政府からのICJ提訴案にも、少なからぬ関心が寄せられるようになりました。この案に対しては、領土問題化の懸念から反対の声もありますが、必ずしも、ICJへの提訴は、中国の言い分を認めたことにはならないのではないかと思うのです。
 
 今日の国際社会では、法的根拠のない領土の領有は正当性を持ちません。日本国政府は、歴史的にも法的にも尖閣諸島の領有は確立していることを理由に、自らICJに訴えることを控えてきました。つまり、自ら先にICJに訴えることは、尖閣諸島の領有権が確立していないことを自ら認める”自殺行為”と見なしてきたのです。しかしながら、現在の状況は、日本国が主観的に領有権の成立を確信している尖閣諸島に対して、中国が、異議を唱える構図となっています。そして、中国は、積極的なプロパガンダによって、日本国の主張を崩しにかかっています。実際に、アメリカは、尖閣諸島については日米安保の対象としながらも、領有権については立ち入らないとする立場を採っています。このことは、中国が武力行使に及んだ場合、日本国の立場がどうあれ、国際社会は、それを”侵略行為”は認定しない可能性が生じたことを意味しています。こうした状況に陥った場合、防御側にある日本国は、自らの法的領有の正当性を証明する必要が生じます。その場合、その証明の場は、ICJ等の国際裁判を置いて他にないのではないでしょうか。つまり、中国の主張を認めるのではなく、完全否定するために、ICJに提訴するのです(領有権確認訴訟…)。
 
 中国の主張を完全否定するためにICJに訴えるのですから、この問題が、領土交渉の対象となるはずもありません。正当な土地の所有者が、隣人から言いがかりを付けられる毎に、土地の分割や譲渡について話し合うはずがないのと同じです。日本国には、尖閣諸島について確固たる法的な根拠があるのですから、ここは恐れずに、ICJに提訴してもよいのではないかと思うのです。
 
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