時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

「進化論」から見えてくる人類共通の脅威:人類には神経細胞のミラーニューロンがある

 
 
 今日は、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。先週の本ブログにおける記事で(8月19日付)、「② 他者から略奪して配る猿が、‘偉い猿’である」というチンパンジー社会におけるもう一つの特徴を指摘させていただきました。
 
人類は類人猿から進化したがゆえに、この特徴を残している人々は、案外多いようです。人類史を概観してみますと、古今東西におきまして②の特徴は、多くの人類にも観察されるのです。しかも、しばしば、②の特徴は、‘善’であるかのように錯覚される場合すらあるのです。
 
 例えば、他国への侵略行為は、当該侵略国の国民が、その当該侵略国のリーダーを英雄視するという傾向を、しばしば齎します。「② 他者から略奪して配る猿が、‘偉い猿’である」が転じて、「他国から略奪して国民に配る人が、偉い人である」と認識する人々も、人類のなかには存在しているのです。
 
 では、なぜ、人類は、国際法国連憲章第一章第一条【目的】)にもとづいて、すべての侵略行為を禁じているのかと言いますと、国際社会は、侵略行為とは、この「② 他者から略奪して配る猿が、‘偉い猿’である」という類人猿の持つ悪しき特徴の典型であり、他者の基本的人権をまったく無視した‘野獣beast’であるがゆえに、生じる行為であると見なしているからです。
 
人類には、ミラーニューロンという神経細胞があるという特徴があると言います。類人猿にも、幼児期にはミラーニューロンは存在しているものの、大人の猿になるまでには消滅するそうです。人類は、生涯にわたってミラーニューロンを持ち続け、この細胞によって、他者との共感性が可能となっているのです。換言いたしますと、類人猿から人類へ、人類は、ミラーニュロンを持続させる方向に進化したことになるでしょう。
 
したがいまして、この神経細胞ミラーニューロンによって、‘自分もこのような扱いを受けたらさぞや気分が悪いであろう’と人類は、感じるようになり、他者に対して加害行為を行わなくなるそうなのです。
 
しかしながら、侵略国は、被侵略国の国民に対して共感性を持たず、被侵略国民の有する基本的権利をすべて無視していることになりますので、侵略国のリーダーには、人類特有のミラーニューロンがほとんど無いということになるのです。
 (続く)
 
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