時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

派遣業者の発想は”奴隷商人”と同じ?

 お正月の三が日を静かに過ごしている間に、ネット上では、人材派遣会社のパソナグループの取締役会長でもある竹中氏の発言が話題となっておりました。本年最初の記事は、新自由主義者が唱える派遣業の問題から論じてゆきたいと思います。
 
 竹中氏の発言を要約しますと、”正社員をなくすことが、経済学的には正しい”ということのようです。しかしながら、この発言、いかにも派遣業の利益を代表しております。そして、国際ネットワークと化した派遣業者こそ、現在の”奴隷商人”なのではないかと疑うのです。そもそも、近代以降の奴隷貿易とは、移民の最初の形態でもあります。アフリカ大陸から新大陸に向けて交易品として売却された”奴隷”は膨大な数に上ります。当然に、その背後には、巨万の富を蓄えた奴隷商人の暗躍があったわけです。奴隷貿易の禁止以降は、移民と言えば、新天地での成功を夢見て海を渡った人々といったイメージが主流となりますが、今日、派遣業者を介した新たなタイプの”移民”の存在が見え隠れするようになりました。それは、中間搾取者という意味において、むしろ、”奴隷商人”に類似しています。また、鵜飼の如く、派遣社員を自社に拘束しておく点において、”奴隷主”にも似通っているのです。
 
 派遣業者としては、移民の増加こそ利益に繋がるのですから、移民政策の後押しには余念がなく、新自由主義や開かれた社会、または、多文化共生主義…といった美辞麗句で実態を糊塗しています。そして、移民問題に留まらず、多方面から指摘されている通り、派遣業者は、一般の国民をも奴隷的な境遇に陥れる可能性があります。”派遣業”というスマートな外観を装っても、他者の労働を貪る事業は、いつの世でも、社会悪なのではないかと思うのです。
 
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