時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

特殊部隊派遣論は北朝鮮の拉致問題でこそ

 イスラム国(ISIL)」による人質事件の発生は、邦人救出のための特殊部隊派遣の是非が問われる問題でもあります。後藤氏の救出を訴える左翼系の人々が、テロリストへの妥協を促しても、実力による奪還について触れない理由は、自衛隊派遣論に発展することを怖れてのことなのでしょう。

 
 
 その一方で、今回の事件に関する世論の反応は、自己責任論が主流となっており、危険地帯への自発的な渡航は、本人責任であると見なされています。実際に、後藤氏は、何が起きても全ての責任は自分にある、と語った上で渡航しており、人質事件の頻発を含めて、プロとして現地事情に人一倍詳しかったわけですから、渡航を決心した本人に責任が全くないはずもありません。ですから、人質事件に際しての自衛隊派遣に関する議論には、当然に、”自己責任の線引き”を要するのですが、拉致事件に関しては、全く以って自己責任論が成立しません。危険地帯である中東地域とは違い、日本国内での外国による犯行であり、かつ、自己の意思に反して北朝鮮に連れ去られたのですから。
 

 邦人救出のための自衛隊の特殊部隊派遣は、本来、拉致事件において議論されるべきことであったのではないでしょうか。

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