時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

宗教政党の怖いところ

 日本国には、公明党といった宗教政党が存在していますが、宗教政党には、幾つかの問題点があります。その一つは、国家権力を手にすることで、最終的には、自らの理想、あるいは、目的を国家や国民社会全体に押し付けようとすることです。

 16世紀にスペインで誕生したイエズス会が警戒されたのも、その組織が法王に忠誠を誓う軍隊的組織であり、国家や国民よりも自らの信仰を優先し、法王やイエズス会の命に従ったからです(創設者のイズナチウス・ロヨラは黒マリアに忠誠を誓ったとも…)。公職に就いていたイエズス会員達は、国民から託されていた国家権力をイエズス会の目的のために使い、マスコミや出版界に身を置いたイエズス会員達は、イエズス会の世界支配の為に世論を誘導し、教職に就いたイエズス会員達は、生徒や学生を洗脳によってイエズス会の教えに導こうとしました。

 そして、その目指すところは、法王を頂点とするピラミッド型の独裁体制であったとされています(この場合、おそらく、法王もイエズス会員…)。イエズス会は、自らの姿をはっきりと見せることなく、信仰の世界に留まらず、政治に加えて、社会全体をも支配下に置こうとしたのです。このイエズス会的な手法は、その後、様々な組織に導入されることになります。親衛隊やSSを組織し、国民に対してナチスへの服従を強制する抑圧的独裁体制を築いたヒトラーも、イエズス会をモデルとしたとする説があります。信仰や信条で強固に結びついた一部の集団が、社会全体の支配を目指して密かに浸透してくることは、一般の国民にとりましては、”見えない支配の手”が伸びてくることに他なりません。

 真偽は定かではありませんが、イエズス会は、裏では、奴隷貿易、武器密売、麻薬取引、人身売買、暗殺…といった種々の犯罪やマフィアと繋がっていたとする告発もあります。カトリックの諸国に限って治安状況が劣悪なのは、宗教と犯罪との間に何らかの関連性があるからなのかもしれません。

 何れにしましても、敬虔な信者集団であるからといって必ずしも道徳的に正しいとも限らず、オウム真理教やISほど極端ではないまでも、信仰の内容によってはカルトや悪魔崇拝である場合もあります。また、宗教集団のトップ、すなわち、教祖が支配欲の塊であるとしますと、宗教政党による政権には、全体主義的独裁化へのリスクが常に付き纏っているのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。