時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

信頼できない官よりも信頼できる民

 明治以来、官の事業であることは、それだけで信頼性が保障されているようなものでした。しかしながら、現在に至り、社会保険庁の不祥事が明るみに出たこともあって、これまで国民から寄せられてきた官への厚い信頼を、官自らが壊してしまった感があります。

 そもそも、官は絶対に信頼できると信じてきたこと自体が、日本人の過信であったかもしれません。あるいは、昔と今の公務員とでは、公務規律に対する心掛けが大きく変化してきていることも原因しているのでしょう。社会・共産主義体制が、特権的なノーメンクラツーラによる腐敗構造に耐えられずして崩壊したように、不透明で隠蔽好みの体質を持つ組織は、いつかは崩れる運命にあるのかもしれません。公的事業の民営化の議論は、こうした官の腐敗体質にどのように対処するのか、という問題へのひとつの回答でもあるのです。

 民営化については、外資などによる乗っ取り計画である!、といった批判を浴びる傾向にありますが、むしろ、民間で行った方が国民の負担を軽減できる場合もあります。年金事業をも含めて、効率性、費用対効果、専門性などが重視される分野では、民間企業の方がはるかに豊富な経営ノウハウを持っているのです。官は、市場を自由かつ公正に保つための監視者の立場に退き、国家の存亡とは関わりのない事業は、民間に任せることも一案であると思うのですが、いかがでしょうか?