時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

公文書を捨てないで!

 我が国では公文書の保管に関する制度が未整備であることは、しばしば指摘されているところです。官公庁の文書のみならず、存在の証である戸籍簿までが、わずか80年の保管義務しかなくなると言います。

 国家とは、過去から未来へとつながる永続的なものであるのに、これでは、国家自身が、自らの歩んできた歴史を隠ぺいし、国民の存在証明をも消去しようとしているように思われてなりません。たとえ、公文書の記録の中に失敗や不正が含まれていたとしても、後世の人々は、これらの事例を教訓とすることができますし、不祥事の防止策を考案する上でも貴重な資料となります。また、戸籍簿を失っては、国民は自らのアイデンティティーの拠り所を失いかねません。

 破棄の理由は、人々が自らの過去の過ちを隠したい官公庁が公文書の破棄を進めたとも、保存場所がないからとも言われていますが、一たび破棄されてしまいますと、取り返しがつかなくなります。むしろ、マイクロフィルム化したものであれ、公文書は永久保存とし、公人は、百年後、あるいは、数百年後の日本人に恥じないような仕事をしていただきたと思うのです。