時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

凄まじき官僚の倫理喪失

 江戸時代の日本国を少しばかり誇らしく思える逸話に、トロイ発掘で知られるシュリーマンが日本国を訪問した際の、税関でのお話があります。それは、シュリーマンが、中国の時と同じように係りの幕府官吏に賄賂を手渡そうとしたら、胸を叩いて「ニッポンムスコ(日本男児?)」といって、決して賄賂を受け取らず、自らの職務を果たそうとした、というものです。このお話から、当時の日本では、官吏の職業倫理が徹底しており、それが官吏としての尊厳を支えていたことを窺うことができます。

 この出来事から150年が経とうとしている現在にあって、日本国の官僚の倫理観の喪失は、目を覆うばかりです。外務省、社会保険庁防衛省などなど・・・。本来、国民からの預かりものであるはずの公的な職権は官僚の私的な欲望追及の道具と化し、公僕の姿とはおよそかけ離れた存在となってしまいました。しかも、21世紀を見据えて行財政改革を行わなくてはならない時機を迎えていがら、あくまでも既得権にしがみ付こうとし、自己改革を行う気概も勇気もないのです。これでは、日本国は、倫理観なき保身第一の官僚と腐敗した官僚組織によって、早晩、滅ぼされてしまいましょう。

 危機意識を持った心ある官僚が存在しているならば、ぜひ、内部から公務員倫理と組織の立て直しを行っていただきたいと思うのです。官僚が自ら自負するほどの能力を持つならば、それは、夢ではないはずです。そうして、政治家の方々が、外部からの制度改革を進め、スリムで効率的な官僚組織を築いていくことができたならば、日本の将来は決して暗くはないと思うのです。