時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

「一院制議連」―議会制度改革の道を開くか?

自民党の衆参議員の有志が集まって、一院制について考える「一院制議連」が、今月16日に発足したと言います。二院制を支持する意見もあるのですが、二院制に拘らなくてもよい理由は、その歴史にあります。

 二院制は、議会制度のスタンダードとみなされがちですが、その発祥の地であるイギリスの議会制の歴史を見てみますと、それが、封建的な身分制度から生まれてきたことはよく知られています。今でも、貴族院庶民院のいう言い方がされていますように、中世にあって、身分や階級の利益を代表したのが、二院制の起源なのです。しかしながら、時代とともに、国民各層の利益や選択が分散するようになりますと、議院に代わって、政党が、集団の利益を代表する組織として政治の舞台で主役を務めるようになりました。この時点で、両院制の存在意義は、相当程度に低下することになります。実際に、現在では、両院制の母国であるイギリスでは、国民代表と位置付けられる下院に圧倒的に優位な権限を付与されています。

 そこで、両院制は、代表原則が異なる二つの議院がお互いに牽制することにより、政策決定をより慎重になすための仕組みとして説明されるようになりました。しかしながら、この根拠も、大統領制や議院内閣制の登場により、民主的に選出された執政機関と議会との間にチェック・アンド・バランスが働いていることと、また、両院の代表原則に違いがない場合にはあまり意味がないこともあって、特に、日本国の両院制では薄れつつあります。

 二院制に拘る必然性がないとしますと、それでは、どのような議会制度があり得るのでしょうか。当然に考えられるのが、一院制です。また、二院制を保ちつつも、両者の代表原則を明確化し(参議院は地方代表・・・)、かつ、衆議院に優越を認める(三分の二条項の撤廃・・・)、という修正策もあります。そうして、もう一つ挙げるとしますと、政策分野ごとに専門化された議院を並列的に設けるという多院制です(この場合、議院間に牽引作用は働きません)。議会制度には、様々な可能性があるのですから、タブーを設けずに、オープンな議論が望まれると思うのです。

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