時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

自己中心主義が蝕む現代社会

 秋葉原で起きた痛ましい無差別殺人事件をはじめ、近年に発生した残虐な事件は、図らずも、現代社会が抱える病の深さを語っているように思うのです。それは、自己中心主義という病です。

 そもそも、人間とは、客観性と主観性の両者によって支えられている存在であり、そのどちらに傾斜しても健全な精神のバランスを失います。自己中心主義とは、客観性が欠けたメンタリティーを意味しており、全ての判断は、自分を中心になされるのです。物事の善悪も、道徳上の判断も例外ではなく、法律があろうが、社会的な倫理があろうが、それは、まったく関係はありません。つまり、自分が気に入らないことは悪と見なし、自分の身に起こる不都合なことも、すべての他者のせいと見なすのです。自己を絶対的な高みに置いているのですから、他者犠牲にすることなど、全く平気です。そこでは、他者を思いやる気持ちも、他者にも自分と同等の命があることも、すっかり忘れ去られているのです。

 自己中心主義に陥りますと、世界や宇宙が自分を中心に回っていると錯覚し、自らは、自然の中にあって、他の人々とともに生かされているという感覚は失われてゆきます。現代社会がバランスを取り戻すためには、他者の存在への意識、つまり、客観性というものを取り戻す方法を真剣に考えなくてはならないのではないか、と思うのです。

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