時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

憲法第9条:一国だけの不戦条約

 日経新聞では、最近、東京裁判を検証するシリーズを掲載しており、その中で、日本国憲法の第9条は、1928年に調印された不戦条約がモデルであったという解説がありました。不戦条約の第一条では、国際紛争の解決手段としての戦争の放棄を宣言しています。

 日本国を含めて第二次世界大戦の主要参戦国のほとんどが、不戦条約の締約国であったことが示すように、高邁な理想を掲げつつも、この条約が、全く機能しなかったことは、残念ながら確かなことです。条約違反に対する制裁条項は設けられていませんでしたし、宣言以上の意味を持たなかったからです。そうして、日本国の場合、さらに問題となる点は、第9条の場合には、他に不戦を約する締約国がない、ということです。つまり、一国だけの不戦条約なのです。

 このことは、憲法第9条によって、自動的に平和が訪れるわけではないことを如実に物語っています。共に平和を誓う諸国もなく、一方的に宣言したに過ぎないのですから。戦争とは、一国で行うものではないことを考えますと、自国の安全と平和には、より現実的なアプローチが必要なのではないか、と思うのです。

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