時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国籍法改正案で生じる国籍と戸籍の分離問題

 現在、国会に提出されております国籍法改正案は数々の問題点を含むものですが、さらに国籍と戸籍との関係からも、問題点を指摘しておきたいと思います。それは、国籍と戸籍が分離してしまう、という問題です。

 日本国では、重婚は禁じられており、法律上の婚姻外において子(非嫡出子)が出生した場合には、子は、原則として、母親の戸籍に入ります(民法第790条)。この法律の規定を、日本人の男性と法律上の配偶者ではない外国人の女性との間に生まれた子に当て嵌めてみますと、子は、出生とともに、母親の出身国の国籍を取得し、母親の戸籍に入ることになります。そこで、この「国籍法改正案」が定めるように、”認知”のみで日本国籍を取得できるとなりますと、国籍は、日本国であり、戸籍は、母親の出身国という分離が生じてしまうのです。婚外子が父親の戸籍に入るには、”認知”に加えて、家庭裁判所の許可が必要であり(民法第791条1項)、この入籍がない限り、国籍と戸籍が別々の国にあるという混乱が発生するのです。。

 本国籍法改正案では、”認知”のみを国籍付与の要件としているようですが、少なくとも、国籍と戸籍を同一の国に一致させるためには、子の父親の戸籍への入籍を要件に加えるべきなのではないでしょうか。国籍付与の要件として、DNA鑑定なども挙がっていますが、本来、”認知”制度が、子の養育を目的としていることを考えますと、より実質的な親子関係を基礎とすべきと思うのです。

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